このページでは、アーケードスティックのパーツ交換や、改造についての概説を書いていきたいと思います。あくまで概説なので、詳しい方法は個々で検索することをオススメします。

初歩的なこと・アーケードスティックの仕組み

これからアケステのパーツ交換や改造をしようという人は、アケステの仕組みを最低限知っておいた方がいいと思います。と言っても、それほど複雑なことを知る必要はありません。

まず、アーケードスティックのようなゲームのコントローラーは全て 電子回路(模様が描かれた緑色の板にケーブルやパーツがつながっているもの)と スイッチの組み合わせで出来ています。そしてパーツ交換で重要なのは、 スイッチの方のだけです。

スイッチとは、電流のオン・オフを切り替えるための装置です。そして、アケステやコントローラーの用いられているスイッチは、 押すとオン・離すとオフになるタイプのものです。

アケステのレバーは、レバーシャフトの周りにこのタイプのスイッチを四つ取り付けた構造になっていて、右に倒すと右用のスイッチがオン、左に倒すと左用のスイッチがオンになる、という仕組みで方向を認識しているわけです。

アケステのレバーやボタンに用いられるスイッチには、通常二つの 端子(電流の出入り口のこと)がついていて、それぞれが リード線(電流が流れる細い線のこと)で電子回路部分と接続されています。場合によっては、端子と電子回路が直接 ハンダづけされていることもあります。

この二つの端子は、片方が 信号線、もう片方が GND(グランド)と接続されています。信号線には常に電圧(電流を流そうとする電気的な圧力)がかかっており、スイッチをオンにすることで、信号線とGNDがショート(接続)され、電流が流れます。この電流の流れを電子回路が検知し、ゲーム機本体に伝えることで、ボタンやレバーの入力がゲームに反映されるのです。

また、GNDは多くの場合、 共通GNDになっていて、すべてのスイッチのGND同士がショートされています。レバー用の4つのスイッチが、2つの端子のうち1つが全て接続されているのは、共通GNDになっているためです。

ずいぶん長くなりましたが、大事なことをまとめると、

  • アーケードスティックのレバーとボタンはすべて スイッチである
  • レバー・ボタンに 信号線GNDを接続すると使用可能になる
  • 共通GNDになっている場合はGND同士が接続されていても大丈夫

こんなところでしょうか。内部にアクセス可能なアケステを持っている人は、実際に開けて見てみると、言いたいことがわかるかと思います。

メンテナンス

使い続けて調子が悪くなったパーツは、パーツ交換しなくても メンテナンスすることで調子が良くなる場合があります。

レバーの動きが悪い、固い、もしくは柔らかい、というような場合は、グリスを塗ったりバネの硬さを調節することで良くなることがあります。詳しい方法は「三和レバー(もしくはセイミツレバー) メンテナンス」などのキーワードで検索すればすぐに見つかるでしょう。

ボタンの反応が悪い、戻りが遅い、チャタリングするという場合、ボタン内部にホコリが溜まっている可能性があります。分解して掃除するという方法の他、PCショップ等によく売っているエアダスターをボタンの隙間に吹きかけると直ることがあると言われています。

(↑エアダスター)

パーツ交換

「メンテナンスしてもパーツの調子が良くならない」「サンワパーツからセイミツパーツに交換したい(またはその逆)」という場合はパーツ交換がおすすめです。パーツ交換のやり方は基本的に

元のパーツと同じように新しいパーツを繋げばOK」

です。なので「パーツ交換可」を謳うアケステの場合なら、そのアケステに対応しているパーツを調べて、通販サイトなどで購入し、元のパーツと同じように取り付け・接続をすれば、照明器具の蛍光灯を交換するのとそれほど変わらないくらい簡単にパーツ交換できると思います。対応パーツの情報はネットで検索すると大抵わかるので、パーツを買う前に調べておくといいでしょう。 家庭用アーケードスティックWikiにも情報がたくさん載っています。

逆にパーツ交換を推奨していないアケステの場合は、そもそも交換が不可能だったり、交換出来ても難易度が高い場合が多いので、工作に興味のある方以外は本体ごと買い換えることをオススメします。

パーツは、秋葉原などにある電子部品ショップの他、パーツメーカーである三和電子・セイミツ工業がそれぞれネット通販をしているので、電子部品ショップに行けない人は利用するといいでしょう。

【楽天市場】アーケードゲーム用ゲームパーツ製造メーカー直販店:三和電子[トップページ]

セイミツ工業通販サイト

改造について

何度か書いたとおり、アーケードスティックは流通量が少なく、また、レバー・ボタンのみでの購入が可能です。こういった事情から、 改造によってより良いアケステを作ろうとする人が結構います。例えば、そのアケステに対応していないパーツを装着するためにアケステ本体を加工したり、アケステの対応機種を変えたり、はてはレバー・ボタン・基板以外の、アケステの箱部分(『ガワ』と呼ぶ)を一から自作したりといったことが可能です。

ただし、市販のアケステを改造する行為は、当然ながらメーカーの想定外になります。基本的には メーカーの保証を受けられなくなると考えた方が良いでしょう(とっくに保証が切れたアケステを改造する場合関係ないですが)。また、オンラインプレイで改造したアケステを使うことには賛否があります。

ここでは、よくある改造方法の中から「 ガワ加工」「 乗っ取り」「 自作」について簡単に書いてみたいと思います。

ガワ加工

「レバー交換したいけど形が合わないから交換できない」という場合、ガワを加工すれば交換可能な場合があります。例えば、PS2用の「鉄拳4スティック」は、ガワを加工することでサンワ・セイミツのレバーを装着することが出来ます。

詳しいやり方は、誰かがネット上にレポートを書いてくれている場合は「(スティック名) サンワ化」などで検索すれば大抵出てきます。

また、ネットにレポートがない場合も、他のスティックの改造方法を参考にすれば大抵交換可能だと思われます。大雑把に言えば、天板の下のプラスチック部分、レバーシャフトを通す穴の回りの適切な位置に、2~4個の穴を開けて、皿ネジでレバーを固定すればいいのです。

ボタン穴の径が合わない場合、小さすぎるなら穴を広げれば装着可能になります(アケステで一般的なサンワ・精密ボタンの直径は30mmです)。ただし、天板の素材は大抵鉄板であるため、金属加工が必要なため作業が大変です。テーパーリーマーという金属工具を使えばいいらしいですが、かなり時間がかかるそうです。

乗っ取り

アケステの電子回路部分を、通常のゲームコントローラーなどのものと交換してしまうことで、対応機種を変更してしまう方法です。例えば、プレステのコントローラーをセガサターンのアケステで乗っ取ってプレステ用のアケステを作ったり、PS3のアケステでXbox360のコントローラーを乗っ取ってXbox360のアケステを作る、といったことが可能です。

乗っ取りの利点は、 アケステの対応機種を変えられることです。例えばセガサターンの「ファイティングスティックSS」を500円、「PlayStationコントローラー」を500円で買って乗っ取れば、1000円でアケステが作れてしまいます。

 

また、流通量が少ないXbox360用のRAPが手に入らない場合は、PS3用の「リアルアーケードPRO.V3SA」を買い、「Xbox360コントローラー」を乗っ取れば、Xbox360用のRAPを作ることが出来ます。

 

ただし、乗っ取りの最大の問題は ハンダづけが必要不可欠ということです。当然、ハンダごて、ハンダ、ハンダ置き台、ニッパー、リード線などの工具と、ハンダづけの技術(といっても中学生の工作レベル)が必要となります。こういったものを持っている人にとっては乗っ取りは有用な方法です。

   

自作

アーケードスティックのガワを自作してしまう人もいます。プラスチック、鉄板、木材などを加工し、レバー・ボタンを取り付け、ゲームパッドの基板を乗っ取るという方法です。

ただし、ここまでやると相当な技術が必要です。当然かなりの出費にもなります。RAPが買えないからと言って自作に手を出すのは茨の道です。 はっきり言って趣味の領域だと思います。正直言って、筆者は自作するスキルは持っていないので、詳しいことはよくわかりません。

もしそれなりの興味と技術があるという人は、「アーケードスティック 自作」でウェブ検索してみるといいと思います。中には「PS2本体をアケステに改造」「ビュウリックス筐体と同じサイズのスティック置き台を自作」といった面白い改造例もネットにアップされています。

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